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『クローディアスの日記』

『クローディアスの日記』

今日は私の好きな本を1冊ご紹介します。

(子ども向けの絵本ではないです。)

すごく有名な本というわけではないのですが、読書好きの方、特に外国文学がお好みの方なら、「クローディアス」という名前にピンとくるものがあるかもしれません。

クローディアス。

かの有名なシェイクスピアの悲劇、『ハムレット』の登場人物です。

主人公ハムレットの父王を殺し、母妃と結婚して王位を簒奪(さんだつ)した叔父であり、狡猾な悪役です。

ところが、『クローディアスの日記』(志賀直哉「清兵衛と瓢箪・網走まで」新潮社1912年より)では、急死した兄王の妃と、年若いその王子を支えるため、故人である兄の妃と結婚する形で王位を継承し、国政のため奔走する善意の人として描かれます。

それなのに、甥であるハムレットからは、兄(ハムレットから見れば父)殺しを疑われます。

自身も兄を亡くした遺族の立場でありながら、保護するべき対象であった兄の遺児から、敵意を向けられる悲しみと怒り…。

もちろん『ハムレット』と、『クローディアスの日記』は作者が異なる、全く別の作品です。

けれど、立場や視点が異なると、こんなにも見えるものが違うのか⁉︎と感じる物語です。

こうした、「立場や視点が異なると…」ということは、保育の現場でもよくあります。

例えば、Aちゃんの場合。

何もしていない(ように見える)お友だちに、急に怒ったり、叩きに行ったりすることがあります。

周囲の大人には、Aちゃんがお友だちに乱暴なことをした、望ましくない行動に見えます。

でも、落ち着いてAちゃんのお話を聞いてみると、「あの子は、今(先生のお話を聞く場面なのに)自分に手を振ってきたんだ。あれは、いけないことなのに、どうして先生は注意しないんだ!」というようなことを訴えます。

なるほど、強いことばで怒ったり、叩いたりする行動そのものは、よくないけれど、Aちゃんなりの言い分、Aちゃんに見えている「正しいこと」があったわけです。

Aちゃんに、「叩かないでね」とお話するだけでは、「叩く」という行動そのものを減らすことはできても、不満や不信感につながりそうですね。

そこで、Aちゃんには「怒らないで、先生に言ってね。(先生がちゃんと注意するからね)」と伝えること、お友だちには、今、何をするのが望ましいか絵カードなどで、わかりやすく伝えることを、職員間で共有し、対応の統一を図っています。

さて、これからAちゃんの行動がどう変わっていくか、乞うご期待です。

子ども達の、ちょっと困ったな…と(大人が)思う行動が続く時、私の視点は「ハムレット」サイドに固定されてはいないか、考えてみることを心がけています。

*今月の画像は、メロンの種です。

 メロンやスイカ、瓜科の果物(野菜?)が美味しい季節です。

 苗から育てることが多いですが、近所の農家さんによると、美味しくいただいた後の種からでも、丁寧に育てれば、1株に1個くらいなら食べられるサイズの実をつけられるそうですよ。

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