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「はさまったの!」

「はさまったの!」

給食の後、歯磨きを終えたはずのAちゃんが、歯ブラシを口元に添えたまま、歩いていました。

「歯ブラシ、お口に入れて歩くと、危ないよ。」

声をかけようかな?と思ったのですが、歯磨き後に、Aちゃんがそうして歩き回るというのは、常にない行動です。

それに、なんだか困った顔をしているような気がしました。

そこで、「Aちゃん、何か困ってるの?」と、きいてみました。

すると、ホッとしたような表情で、

「あのね、ここ見て。はさまったの!あのね、みかんの…。」

お口を開けて見せてもらうと…。

下の前歯の間に、デザートのオレンジの…、「じょうのう」というのだったでしょうか?

内側の薄い袋の繊維がはさまっています。

「ね?先生、助けて。これで。」と、歯ブラシを手渡してくれました。

歯ブラシでチョンチョン…。

「どうかな?」ときくと、舌で歯の裏側を触って、「うーん。あの…、こっち、した(下?舌?)側からしたら、とれそうなの。」と。

とても的確な伝達です。

このやりとり、例えば1年前だったら、きっと上手に伝えられなくて…、または、初めから伝えようと思えなくて、怒ってしまっていたのではないかと思います。

こうして、「困っている」ことを、伝えられるようになったことや、伝えることができると自信を持てたことで、Aちゃんが泣いたり怒ったりしなくてすむことに、つながっているのでしょう。

「困ってるの」「助けてほしいよ」と、周囲の人に伝える手段を持つことは、子どもたちにとって、落ち着いて安心して過ごすために、大切な要素だと感じます。

また、一生懸命伝えたことを、大人に「わかってもらえた!」「ちゃんと対応してもらえた」という経験を重ねることも、同じように大切です。

ちなみに、その「手段」は、必ずしもことばである必要はありません。

表情や視線、ジェスチャーや、大人の手を引く等の行動でも、いいのです。

もちろん、泣いたり、怒ったりすることも、子ども達にとっては、伝達手段の1つですよ。

ただ、毎回、泣いて怒っていては、周りの大人も、子ども自身も、しんどいですからね💦

まずは、伝えようとすることと、伝わった経験をすることが大事。

そして、ある程度、伝える意欲が育ったら、より望ましい方法(正確に、多くの人に、楽に、伝わる方法)にシフトできるといいですね。

それからね。

Aちゃんみたいに、伝わること自体はできるようになったなら。

次は、自分から、「助けて」と、声をかける(行動を起こす)ことができるようになれば、今よりもっと、困っている時間を短縮し、快適に過ごすことができますね。

それができるようになるためには、私たち大人が、子どもたちの表情や行動に注目し、子どもたちからの、ちょっとしたアクションに、確実に、タイムリーに反応してあげることが必要です。

ちゃんと見てるよ。

ちゃんときくよ。

あなたからの発信、待ってるよ。

大人の観察と対応が、子どもたちの「ことばの種」を、育てる土壌となりますよ。

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