- ことばの種
「目を閉じて」?
最近、ちょっと気になっているお子さんがいます。
お昼寝の時間に、寝入りにくいことがあるAちゃんです。
様子を見ていると、眠くないわけではないようなのですが、お布団に入って静かに目を「開けて」います。
大人の感覚では、目は閉じた方が眠りやすいと思うのですが…。
Aちゃんに「目をつぶってごらん」と声をかけると、「うん」と頷くのですが、やはり目は開けたままです。
頭をなでなでしながら、自然にまぶたが閉じるように、おでこもなでると、スーッと目を閉じて、眠りにつきます。
目が開いたままだと、視覚的な情報(お友だちの様子、カーテンが風に揺れる様子、職員の動き等々)が刺激になり、眠りにくいのでしょうね。
気になっているのは、Aちゃんがどうして目を閉じないのか?ということです。
促しに頷いたり、撫でられて目を閉じたりする様子を見ると、眠りたくないために、目を閉じることを拒否しているわけではなさそうなのですが…。
①「目を閉じて」ということばがわかりにくいのかな?
②意識的に「目を閉じる」という動作がわかりにくいのかな?
(「耳たぶを動かして」と言われても、できない人にとっては、どうすればいいのか、わからないですよね)
③目を閉じるのが不安なのかな?
(暗くなるのが怖い、周りの様子がわからなくなるのが不安…等)
今、私が考えているのは、この3つの理由です。
もしかしたら、もっと他にも考えられるかもしれませんね。
さて、①、②が理由なら、遊びの中で「目を閉じる」という動作、表情を見せたり、実際にしてみたりする活動を取り入れるといいかもしれません。
にらめっこや、絵本「かおかお どんなかお」などがいいでしょうか?
③が理由なら、Aちゃんの不安を取り除けるような対応をしたいところです。
何が怖いのか、どうして不安なのか…も、探っていく必要がありそうです。
(私は小さい頃、寝室の天井の木目が人の横顔に見えて、目を閉じている間にこっちを振り向くような気がして、とても怖かったです…。)
お昼寝の時間に、「眠くないから、寝ない」こと自体は、別に大きな問題ではありません。
疲れて、しんどくなったり、機嫌が悪くなったりしないなら、起きて、別の活動をすればいいのです。
(実際に、センターでは、「眠くない」「眠れない」お子さんは、別室で、静かに遊んで過ごしています。)
ただ、眠いのに、何か理由があって眠りにくいのなら、その原因を解決(軽減)する必要があります。
お昼寝以外の場面でも、ちょっとした困りごとを感じている可能性があるからです。
例えば、「目を閉じる」ということばがわかりにくいお子さんは、大人の声かけの意味がわからず、戸惑う場面が他にもありそうです。
「目を閉じる」動作が難しいお子さんは、もしかしたら、身体の細かな動きに苦手さがあるかもしれませんね。
不安で目を閉じられないお子さんは、普段から不安を感じやすく、緊張と闘いながら毎日がんばっているのかもしれません。
…それって、しんどいですよね。
がんばっているのに、一生懸命やっているのに、周囲の人にわかってもらえないと、悲しくなってしまいます。
「お昼寝の時に、目を閉じない」なんて、ほんの些細なことに思えるかもしれません。
けれど、こうした小さな「あれ?」の中に、子どもたちがより楽しく、よりのびのびと過ごすための手がかりがありそうで、毎日、見守り、考え、試行錯誤しながら関わっています。